「遺言執行者が手続きを全然進めてくれない…」
相続開始後、遺言の内容に従って手続きをお願いしても一向に進めてもらえない。そんなとき、遺言執行者を解任する方法があるのをご存じでしょうか?
この記事では、司法書士福田龍之介事務所が、遺言執行者を解任したいと考えたときに確認すべきポイントと具体的な手続き方法を、わかりやすく解説します。
目次
- 遺言執行者が任務を怠った場合やトラブル時は解任できる
- 遺言執行者を解任できる具体的なケース
- 遺言執行者の解任には一定の期間がかかる
- 遺言執行者を解任するには家庭裁判所への申し立てが必要
- すぐに職務を停止させたい場合の対処法
- 解任後の遺言の執行方法
- 生前に遺言執行者の解任はできるのか?
- まとめ
1. 遺言執行者が任務を怠った場合やトラブル時は解任できる
遺言執行者が職務を果たしていない、または不正行為など正当な理由がある場合、家庭裁判所に申し立てをすることで解任が可能です。
ただし、相続人や受遺者などのすべての利害関係者の同意が必要です。たとえ一人でも反対する人がいれば、解任は認められない可能性があります。
2. 遺言執行者を解任できる具体的なケース
2-1. 解任が認められるケース
- 遺言執行の手続きを長期間怠っている
- 財産目録の提示や報告義務を果たさない
- 相続財産の使い込みが疑われる
- 一部の相続人にだけ有利な行動をしている
- 病気・長期不在で連絡が取れない
- 正当な理由のない高額な報酬請求
2-2. 解任が認められないケース
- 遺言の内容に不満がある
- 遺言どおりに執行しているだけ
- 報酬が高いという理由だけ
3. 遺言執行者の解任には一定の期間がかかる
家庭裁判所に申し立てをしても、解任審判が下されるまでには通常1か月程度かかります。その間、遺言執行者は引き続き職務を行うことが可能です。
直ちに執行を止めたい場合は、次の「職務執行停止の申立て」を検討しましょう。
4. 遺言執行者を解任するには家庭裁判所への申し立てが必要
4-1. 申し立ては代表者1名でもOK
全員の同意があれば、代表者1名が家庭裁判所へ「解任審判申立書」を提出するだけで手続きが可能です。
4-2. 申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
4-3. 必要書類
- 申立書
- 申立人の戸籍謄本・住民票
- 遺言執行者の戸籍謄本・住民票
- 被相続人の除籍謄本や住民票除票
- 遺言書の写しまたは選任審判書
4-4. 解任理由の記載は明確に
申立書には、遺言執行者が解任されるべき正当な理由を具体的に記載します。内容が曖昧では認められません。
5. すぐに職務を停止させたい場合の対処法
解任審判の前に手続きを止めるには、「職務執行停止の審判」を同時に申し立てましょう。また、執行の中断を避けるためには、「職務代行者選任の申し立て」も併せて行うことをおすすめします。
5-1. 職務停止と代行選任の同時申立てが有効
5-2. 代行者の選任は裁判所が決定
中立的な弁護士等が任命されることが多いです。
5-3. 保全処分用の申立書を使用
裁判所ホームページからフォーマットをダウンロードして利用します。
6. 解任後の遺言執行方法
遺言執行者が解任された後の対応は、次のいずれかです。
- 相続人が協力して執行を行う
- 新たな遺言執行者を選任する
相続人間でトラブルの恐れがある場合は、新しい遺言執行者の選任をおすすめします。
7. 生前に遺言執行者を解任することはできない
遺言は被相続人の死後に初めて効力が発生するため、生前に記載された遺言執行者を解任することはできません。
どうしても解任したい場合は、新たな遺言を作成し、別の遺言執行者を指名しましょう。
8. まとめ|遺言執行者の解任は正当な理由が必要です
遺言執行者の解任は、単なる感情的対立や不満では認められません。正当な理由と、全利害関係者の同意が必要であり、解任には時間もかかります。
直ちに対応したい場合は、「職務停止の申立て」を忘れずに行いましょう。
お困りの方は、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。
お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。